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2009年7月号 “加齢”なる世代へようこそ

年齢社会学入門
“加齢”なる世代へようこそ 9

老いない「私」
文:木田橋美和子

老いという「仮面」

電車の中で席を譲られることは、多くの人にとって初めての老人体験ではないだろうか。自分では相変わらず「譲る人」のつもりが、いつの間にか他人から見ると「譲られる人」になってい たという現実を思い知らされる。内心ムッとしながらも、せっかくのご好意をムダにしてはと、大抵の人は老人になりすまして(?)有難く座らせていただくことにするようだ。「お年寄り」に手を貸そうと歩み寄ったら、逆に相手の人が自分を助けようと皺々の手を差しのべてくれたという、麗しくもほろ苦い体験を語ってくれた高齢者もいる。
一般に人の性格や考え方は30歳以後は大きく変わらないとされ、そのあたりの自分がアイデンティティのコアになるようだ。あんなに固く信じた「変わらぬ愛」が呆れるほど簡単に色あせたことはさておくとして、自分の中にいる「本当の私」は、25歳くらいからあまり変わっていないと感じている人は多いのではないか。口に出すと「気は確か?」と言われそうなので黙っているが、「私」はあの時のままの自分。それなのに、周囲から見た自分は正真正銘の老人になってしまっている。実に多くの高齢者が、勝手に老化してゆく肉体の内側に、変わることのない若い自分を密かに抱えて生きているという事実から、老いとは、本当の自分を覆う「仮面」に過ぎないと主張する学者たちもいる。

(後略)

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