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2010年5月号 ノジュールカルチャーカレッジ
短期集中誌上講座
ノジュールカルチャーカレッジ
地形図を読む 1
旅に欠かせない"地図"。地図研究家の今尾恵介氏が、実用としてだけではなく、地図自体を読み解く面白さをご紹介します。机上で街や景色を想像したり、旅先で地図と風景を照らし合わせたりと、地図とのつきあい方が広がります。
地図の種類と地形図

この世にはいろいろな地図があふれています。地図といえば昔から「道案内」の機能が求められてきましたが、最近はパソコンや携帯電話の地図、またはカーナビで用を済ませる人も多くなりました。紙に印刷された地図とじっくり向き合う機会は減りましたが、今回は地図の中でも味わい深い地形図を取り上げてみましょう。
地図の種類には道路地図や観光地図、市街図、住宅地図のような町や村などの「地面の情報」をびっしり詳しく表わしたものもあれば、地下鉄やバスの路線図、森林資源の分布図、海図や天気図、洪水ハザードマップといった特定の目的で用いられるもの、「世界の携帯電話普及率」や「国民1人あたりGDP」を比較する統計地図、壁に掛けて楽しむためのイラストマップや鳥瞰図などさまざまで、複数の性格や目的を併せ持ったものもあります。
これらを総称して「主題図」と呼んでいますが、そのベースとなる地図が「基本図」たる地形図です。特定のテーマはありませんが、全国を統一縮尺でカバーし、その地域の地誌的状況、すなわち地形から植生・集落・交通などを概観できるように作られています。
地形図の整備は明治10年代から始められました。最初はヨーロッパと同様に陸軍の部局が作っていましたが、戦後はそれを国土地理院が引き継ぎ、今日まで約130年にわたって全国各地を連綿と測量し、近代化していく日本の隅々にわたる無数の「土地の肖像」を作製してきました。
縮尺と記号で読み解く
縮尺はスケールとも言いますが、長さを何分の1に縮めたかが図のどこかに記されています。たとえば日本の地形図の基本的な縮尺「2万5千分の1」ですが、1:25000と表わします。長さをそれだけ縮めたものですから、面積はその2乗で6億2500万分の1。図中の1cmは2万5千cm=250m、1kmは図上では4cmとなります。フランスではそのことから2万5千分の1地形図のことを別名「4cm地図」などとも呼びます(10万分の1は「1cm地図」)。
縮尺もいろいろで、たとえば1軒ごとの居住者名を記した住宅地図の1500分の1から、道路地図の10万分の1、5千万分の1前後の地球儀まで千差万別です。
この世の中を極小に縮めて表わすのですから、鉄道のレールを忠実に2本描いたり、神社の本殿の形を凹凸まで忠実に描くのは不可能です。また「○○神社」「○○小学校」などの文字を全部書き込むわけにはいきません。そのためには縮尺に合わせた記号化が必要で、昔からいろいろな地図記号が考えられてきました。
記号といえば文(学校)・◎(工場)・卍(寺)・〶(郵便局)など建物を区別するための記号を思い浮かべますが、黒い四角形で表現する家並みや等高線、二条線で表わされる道路、それに水面を青で表わすのも「記号」です。これらの記号の体系を「図式」と呼んでいます。
(後略)
今尾恵介先生
いまおけいすけ●1959年生まれ。地図エッセイスト。出版社勤務を経て、鉄道・地図・地名に関する執筆活動や講演、TV出演、(財)日本地図センターの客員研究員などで活躍中。『地形図でたどる鉄道史(東日本編・西日本編)』(JTBパブリッシング)、『日本鉄道旅行地図帳』(新潮社、監修)などの著書も多数。今年4月には『新鉄道廃線跡を歩く』シリーズ5冊(JTBパブリッシング)が発売。
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表紙写真:
夕暮れの関宿(三重県亀山市)
(宮地工)





