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2010年6月号 いつか泊まってみたい懐かし宿

いつか泊まってみたい懐かし宿 33
御舟宿いろは
[広島県福山市]
文・写真:斎藤 潤

貴重な史跡を消さないために

鞆(とも)の浦のバス停で下車し確認すると、宿はもっと港寄りらしい。海岸から狭い道に入り、古い町並みを楽しみながらぶらぶらするうち、左手にベンガラ格子の町家が見えてきた。
軒先に『龍馬談判の町家旧魚屋萬蔵宅』と記した布が掛り、下には「宮崎駿監督デザイン御舟宿いろは」の文字が染め抜かれている。海援隊のいろは丸が、紀州藩の船と接触し沈没した事件で、補償交渉が行われた建物だった。 この宿がユニークなのは、鞆に遺された空き家の再生と活性化に取り組む『鞆まちづくり工房』というNPO法人が運営していること。
代表の松居秀子さんによれば、「空き家になって数年たった2003年、この建物は売りに出されましたが、なかなか買い手がつかなくって。取り壊されそうになったんですよ。このままでは、龍馬ゆかりの史跡が消えてしまう。そんな危機感から、私たちが買い取ることにしました。文化文政期に建てられたので、220年くらいたっています」
NPOを支える法人・個人の寄付や借入金で、貴重な史跡はなんとか消滅させずに済んだ。さらに3年に及ぶ大々的な改修を行い、08年1月に1階部分を喫茶店としてオープン。6月には、2階を宿として開放するようになった。3組まで宿泊可能だが、行き届いた対応をするため、基本的には2人2組まで受け入れている。

(後略)

斎藤 潤

さいとう じゅん●1954年岩手県生まれ。フリーライター。テーマは島、旅、食など。おもな著書に『日本《島旅》紀行』『吐噶喇列島』『旬の魚を食べ歩く』『島─瀬戸内海をあるく 第1集 1999-2002』。近著は『島で空を見ていた』

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