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2010年6月号 スタイル歳時記[6月]

スタイル歳時記 25
[6月]
梅雨の日やガーデニングに重宝する
フィールドブーツの傑作。
文:遠山周平
写真:中村 淳

現役最古参の靴は?

もっとも長く愛用している靴はなんだろう?思い立って家の靴入れを探してみた。棚を占めているのは手作りの革靴。そのほんどは、40代に無理して購入したものだ。10数年を経てますますはき心地が良くなっている製品ばかりだから、投資効果の高い買い物をしたと、今は思っている。
ひも結び式の革靴は英国か米国製。スリップオンはフランスものがお気に入り。しかし棚の中央で「俺はいまだに現役だぞ!」と、あたかもベテランの野球選手のように存在感をアピールしている靴がいた。そいつこそが一番長く愛用している靴。
分厚いゴムと武骨なレザーという異色素材の組み合わせ。外観も個性的だ。靴先の形状はタスマニアの珍獣カモノハシそっくり。しかしこのユーモラスなデザインにひとたび魅せられると愛着が増し、別れがたくなるのも事実。しかも、ユニークすぎるデザインゆえ、どんなパンツにも不思議に似合ってしまう魔力も持ち合わせている。筆者などは、ゲリラ豪雨にたたられた日のパーティへ、タキシードにこの靴を合わせて行き、ホストにほめられた経験をもつほど。
ガムシューズとかビーンブーツと呼ばれるこの靴の名はメインハンティングシューズ。アウトドアアパレルとギアのメーカーとして知られる米国LLビーン社のロングセラー商品(誕生は1912年)である。

狩猟靴を超えた名品

筆者がこれを初めて購入したのは1980年。当時フリーの編集者として参加していた『ホットドッグプレス』というヤング雑誌でプレッピーファッションの特集を担当したのがきっかけだった。
以前からこの靴の存在は知っていたが、狩猟用という認識だったから日常生活で使うことはないと考えていた。しかし特集の種本となった『オフィシャルプレッピーハンドブック』(1970年代に米国で発行。ベストセラーになる)には、プレッピーたちが晴雨にかかわらずこれを愛用していると書いてあった。
そこで個人輸入しようと思い立ったわけである。
プレッピーが愛用しているのは、ビーンズラバーモカシンと呼ばれる丈の短いスリップオン。しかし筆者が注文したのは、くるぶし丈のガムシューズと呼ばれるもの。というのも取り寄せたカタログがセールを実施していて、たまたまこのチャッカブーツタイプの靴だけが安くなっていたからだ。この選択が大正解だった。

(後略)

遠山周平

とおやま しゅうへい●服飾評論家。1951年東京生まれ。日本大学理工学部建築学科卒業。雑誌のファッションディレクター、新聞のファッションコラムニストを経て、服飾評論家に。最新の著書に『洒脱自在』(中央公論新社)がある。買って、試して、書くという信条に、最近自ら作って、という項目が加わった。

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