ノジュール11月号
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「上品で落ち着きのある味わい。派手な香りや強い主張があるわけではないのに、他では代えのきかない存在感があります。きちんとした仕事を積み重ねて来た果ての穏やかな旨み、芯の強さを感じるお酒です。馬刺しからこづゆまで、会津名物の料理によく合います」(藤田さん)。自家栽培はじめ、地元会津産の有機栽培米を全量使用。「印象が鮮やかで味にメリハリがあり、飲むと元気の出るお酒。飲み口にまったくもたつきがありません。特別な日のごちそうだけでなく、揚げものなど日常的な晩ご飯のおかずとも違和感なく合います」(藤田さん)。瓶詰めされた後は、0℃の冷蔵庫で低温管理。味のバランスと旨みが絶妙で、食中酒にぴったりの味わい。「東北地方は、もともと、全国有数の米穀地帯にして気候が寒冷、と日本酒造りに適した条件を備えています」と藤田千恵子さん。そのうえ、酒造好適米や酵母などの開発も県単位で熱心に行なわれ、これが、地域ごとに個性ゆたかでバラエティに富む酒を生み出す土壌となっているのだそう。 また「近年いいなと思うのは、若い造り手の頑張り。全国的に見られる動きではありますが、中でも東北で目立つように思います」と藤田さん。「かつては門外不出だった情報を蔵どうし積極的に交換し合ったり、農家と連携して地元の米で地元の酒を造るなど、業種を超えた後継者どうしの交流が活発なところもあり、地域活性化につながっています」 今までに飲んだことがない一本を選ぶ時には、原料米の種類や精米歩合、日本酒度数といったデータ(瓶の裏のラベルに記載)を参考に。「裏ラベルを読むことで、自分の好きなタイプに出会う確率が上がります。これらのデータを見て覚えていくことで、お酒の輪郭がつかみやすくなるからです」 冬の夜長にじっくり味わう東北の美酒で、極上のひとときを過ごしたい。ふじたちえこ●群馬県生まれ。フリーライター。日本酒の味わいや酒蔵の文化、造り手たちに魅せられ、全国各地の蔵元めぐりをライフワークにする。著書に『おとなの常識 日本酒』(淡交社)『美酒の設計』(マガジンハウス)ほか直販不可。要問合せ曙酒造☎0242-83-2065河沼郡会津坂下町字戌亥乙2akebono-syuzou.com入手方法直販不可渡辺宗太商店(福島県会津若松市)☎0242-22-1076www.souta-shoten.com植木屋商店(福島県会津若松市)☎0242-22-0215www.uekiya.net髙橋庄作酒造店☎0242-27-0108会津若松市門田町大字一ノ堰字村東755homepage3.nifty.com/sakeshou/入手方法主な販売店酒米:五百万石(会津産有機米)精米歩合:60%日本酒度数:+4アルコール度数:15度酒米:五百万石 (会津坂下産)精米歩合:60%日本酒度数:+3アルコール度数:15度価格: 1.8ℓ 2310円 720㎖ 1155円価格: 1.8ℓ 3360円 720㎖ 1785円スタイリング:植木もも子 文:羽根田月香、本城さつき 写真:松澤暁生藤田千恵子さんが選ぶ東北の銘酒一生青春 特別純米 曙酒造(福島県)会津娘 無む為い信しん髙橋庄作酒造店(福島県)伝統の酒造りを守りつつ、新素材の研究にも余念がない東北地方。長年日本酒の取材を重ねて来た藤田さんに、おすすめをうかがいました。決して派手ではないが芯がある飲むと元気が出る、この躍動感地域ごとに個性を発揮81

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