お悩み解決!旅するカラダ 第31回

スマホ首と不定愁訴

鄭 信義先生
(文:湯浅真弥 イラスト:安齋 肇)

スマートフォン(スマホ)は今や老若男女を問わず、日常生活を送るうえでの必需品となりました。
使用する時間も長く、それとともに新たな病気も生まれています。
その具合の悪さ、もしかしてスマホ首ではありませんか?

スマホ首とは

前傾姿勢を続けていると、首の筋肉が硬化し、さまざまな不定愁訴が現れますが、
スマホの使いすぎによって起こるのが「スマホ首」です。

首の異常が起こす
自律神経の乱れ
スマホやパソコンを見る時には、どうしても前かがみになり、その姿勢が長時間に及ぶと、首の前側にある胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん)が前方に引っぱられ続け、常に縮んだ状態になってしまいます。また、後ろ側の板状筋(ばんじょうきん)や僧帽筋(そうぼうきん)にも大きな負担がかかりあらゆる不調の原因となります。胸鎖乳突筋は「首の筋肉の王様」ともいわれ、首の回旋動作だけでなく、重い頭を安定させ、呼吸の助けなどもしている重要な筋肉です。

首は7つの小さな頚椎(けいつい)から構成されており、首の筋肉がこり固まってしまうと、肩こりや腰痛などを引き起こすだけでなく、頚椎には自律神経が通っていますから、自律神経のバランスが崩れ、頭痛やめまい、倦怠感、抑うつなどの不定愁訴(ふていしゅうそ)の原因となるのです。「スマホを使っているとき、首こりや肩こりを感じる」「見上げるとき、首に違和感がある」「長時間うつむきでいて、姿勢を変えることが少ない」「眼が疲れやすい」「ドライアイである」「猫背である」「1日5時間以上、スマホやパソコンを使っている」「体が疲れやすいと感じる」「やる気が起きない」「スマホを枕元に置いて寝る」「睡眠不足を感じることが多い」「何となく体に不調がある」といった中で、3つ以上、心当たりがあれば、スマホ首の可能性があります。

健康な人の頚椎はきれいなカーブを描いていますが、スマホ首の状態を放置しておくと、首の筋肉に関節が引っぱられてカーブがなくなり、まっすぐになりかねません。これはいわゆる「ストレートネック」です。個人差はあるものの、スマホ首を放置してから約3ヵ月でストレートネックに悪化するといわれています。

ストレートネックはレントゲンで診断できますが、自分自身でも見分けることは可能です。後頭部や肩甲骨、お尻、かかとを壁につけて立ってみてください。もし、後頭部が壁につかなければ、ストレートネックの疑いがあります。背中の一番上の骨である第7頚椎だけが飛び出て、手で触れられる場合も可能性は大きいといえるでしょう。ストレートネックを放置すると、今度は頚椎椎間板ヘルニアとなり、最悪の場合、歩行障害や排尿障害になり、手術を強いられる危険性も高まります。できるだけ早い対応が必要です。

スマホ首の解消法

スマホ首を解消するには、
首の前側の筋肉をほぐさなければなりません。
筋肉を手で揉むのではなく、簡単な首まわしが有効です。

肩こりや五十肩にも
効果的なストレッチを
首がこると、ついつい首の後ろを揉みたくなります。しかし、前述したとおり、スマホ首の原因となっているのは首の前側にある胸鎖乳突筋なのです。ただし、この胸鎖乳突筋を揉みほぐすことは簡単ではありません。首の前側には、神経やリンパ腺、血管が走っており、誤ってほぐしてしまうと、事故を起こす危険性もあります。そこで胸鎖乳突筋に直接触れることなく、ほぐすことができる「スマレッチ」を考案しました。
①まず、肩幅より少し狭い幅でリラックスして立ちます。上に引っぱられるようなイメージで立つことがポイントです。
②右手を下へ降ろし、左手で右の脇をつかみます。左手の親指と残りの4指でしっかりつかんでください。
③そのままの状態で、手の甲を上に向けて右腕を水平の位置まで上げます。
④左耳が左肩に近づくように、上を向きましょう。右耳が後方へ引っぱられるのを感じつつ、約15秒キープします。

これが基本となる「スマレッチ」です。デスクワークの途中、椅子に座りながら行ってもかまいません。

基本の「スマレッチ」の状態から、首を右まわり3回、左まわり3回まわし、腕を反対にして同様に行います。硬くこっていた首の筋肉がほぐれ、血流が改善されるはずです。首の下部にある第5、6、7頚椎と背中の一番上の第1胸椎を動かすことができます。これは通常の首まわしではできません。ストレートネックには絶大な効果を発揮します。

肩周辺の筋肉をほぐすには、基本の「スマレッチ」の状態から、腕を前方に5回、後方に5回まわしてください。インナーマッスルも同時にほぐせますので、肩こりだけでなく五十肩の予防や改善にも効果的です。

(ノジュール2016年6月号からの抜粋です。購入希望の方はこちらをご覧ください。)
ご注文はこちら