お悩み解決!旅するカラダ 第33回

中高年のめまい

山中敏彰先生
(文:湯浅真弥 イラスト:安齋 肇)

外出や旅先で起こると厄介なのがめまいです。
人ごみや乗り物移動、疲れはめまいを誘発しやすくなります。
今回は中高年に多いめまいを紹介しましょう。

めまいの種類

めまいは、原因によって内耳性や全身性、中枢性めまいなどに分かれます。
どのタイプのめまいかを、まず見きわめなければなりません。

気にしないことも
治療のひとつ
中高年の代表的なめまいには、内耳性では良性発作性頭位(りょうせいほっさせいとうい)めまい症やメニエール病、全身性では自律神経失調症(じりつしんけいしっちょうしょう)やストレス関連のめまい、中枢性では椎骨脳底動脈循環不全(ついこつのうていどうみゃくじゅんかんふぜん)や脳血管障害などの病気があります。中でも多いのが、良性発作性頭位めまい症と自律神経失調症、ストレス関連のめまいです。

良性発作性頭位めまい症は、頭を動かすことによって誘発され、ぐるぐるまわる感じがします。通常1分以内で治まるのが特徴です。内耳にある耳石と呼ばれるものが、平衡感覚をつかさどる耳の三半規管(さんはんきかん)に入ってリンパの流れを乱し、めまいを起こします。めまいが激しかったり、吐き気を伴ったりすることもありますが、基本的に良性の病気です。

治療をしなくても時間を置くと治りますが、エプリー法と呼ばれる頭を動かす理学療法によって耳石を流してしまえば、短期間で治ります。

自律神経失調症やストレスによる全身性めまいは、フワフワやゆらゆらといったつかみどころのない症状が多く、診断がなかなか明確にならないことも少なくありません。この病気では、のぼせや手足の冷感、頭や肩の重さ、体のだるさなどの症状を伴いますし、起立すると血圧が下がって立ちくらみ症状が出現することもあります。

一方、めまいには重篤な病気が潜んでいることもあり注意が必要です。意識がない、手や足が動きにくい、言葉が出てこない、力が抜けて歩けないということならば、外出先でもすぐに救急車を呼んでください。脳卒中のリスクが高まる中高年の場合、その症状とも考えられます。

また、日頃から慢性のめまいやふらつきを抱えている人は、転倒するのではないかと心配して、外出や旅行を控えがちです。

めまいのみで軽い症状ならば、それが続いたとしても大きな心配はいりません。

こうした不安がストレスの元になって、かえってふらつきを悪化させ、生活がしにくくなります。めまいへの過度な心配で、自身の活動の妨げにならないよう注意してください。気にしないことも治療のひとつです。外出や旅行の時にはめまいを抑える頓服薬を携行することをおすすめします。

椎骨脳底動脈循環不全とは

めまいの中でも、中高年で特定の難しい病気が
椎骨脳底動脈循環不全です。
原因不明のめまいに悩まされているときは、可能性があります。

医療機器の整った病院で
検査をしよう
首は椎骨(ついこつ)が連なって重い頭を支えています。首から脳へと血液を送るための血管が椎骨動脈と脳底動脈です。この動脈の流れが悪化すると、脳の中でも、とりわけ平衡感覚や運動調節をつかさどる脳幹と小脳に十分な血液が運ばれなくなり、めまいとなって現れます。加齢などによって椎骨が変形し、椎骨動脈を圧迫することもありますが、多くは動脈硬化や塞栓です。加齢とともに椎骨の変形や動脈硬化は進みますから、この病気は中高年から増えていきます。めまいは頭や首をまわしたり、急に振り向いたりしても起こりますし、安静時に起こることも珍しくありません。回転したりフワフワしたり、めまいの症状は多様です。

めまい以外にも、顔がしびれる、ものが二重に見える、ろれつが回らないなどの脳神経症状も伴います。症状は通常15分以内でなくなりますが、1時間以上にわたるものもあり、再発をくりかえすことも特徴のひとつです。

この病気は、一時的な血流障害によって起こりますが、脳の重要な血管が詰まる脳梗塞や血管が破れる脳出血などの脳卒中ほど重篤な病気ではありません。しかし、高齢で、高血圧や脂質異常、糖尿病、不整脈の合併があり、再発をくりかえす場合は、脳卒中のリスクが高まります。

ほとんど問診によって診断可能です。症状がめまいのみのときは、脳やその血管の異常を見つけられるMRIやMRAなどの医療機器が揃っていないと診断が困難となります。

治療としては、血流を促し、動脈硬化を予防、改善することですが、もし、メタボリック症候群を指摘されているなら、それらを治療するとともに、節煙や節酒、バランスのとれた食事、規則正しい睡眠、適度な運動など生活習慣の改善を心がけてください。

(ノジュール2016年7月号からの抜粋です。購入希望の方はこちらをご覧ください。)
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