お悩み解決!旅するカラダ 第38回

緑内障

富所敦男先生
(文:湯浅真弥 イラスト:安齋 肇)

緑内障は、加齢とともに増える「視野が狭くなる」目の病気です。
40歳以上の約5%(20人に1人)に緑内障があるとされ、珍しい病気ではありません。
早期発見・早期治療がとても大切なので、定期的に眼科を受診しましょう。

緑内障はどんな病気?

患者さんの多くは自覚症状がないことが多く、
健診などで指摘されて発覚することがほとんどです。
定期健診で目の異常を指摘されたら、眼科で詳しい検査を。

視神経が障害されて
視野が徐々に狭くなる
私たちがものを見るときには、まず目の奥にある網膜に像が映り、それが電気信号となり目と脳をつなぐ視神経を通って脳に伝わり、「見えた」と感じることができます。

緑内障(りょくないしょう)はこの視神経がなんらかの原因で障害され、見える範囲(視野)が徐々に狭くなっていく病気です。

緑内障を発症した場合、ほとんどの患者さんはその後ずっと通院や点眼治療が必要となります。ただ、非常にゆっくり進行するので、失明などの深刻な状態に至ることは多くありません。健診などで緑内障の疑いがあると指摘されたとしても、むやみにおそれることなく眼科を受診して、適切な治療を受けるようにしましょう。

緑内障が発症する原因はまだはっきりわかっていません。ただ、「目の中の圧力(目の硬さ)」、つまり眼圧が高い状態(20㎜Hgを大きく超える)が続くと発症しやすいことがわかっています。また、最近は、眼圧が高くなくても緑内障を発症するケースが少なくないことから、眼圧以外にも原因があると考えられています。

成人の緑内障は、何か原因があって眼圧が上昇する「続発緑内障」と、特に原因がない「原発(げんぱつ)緑内障」に大きく分けられます。

日本人に多いのは「原発緑内障」の「解放隅角緑内障(かいほうぐうかくりょくないしょう)」で、この場合、眼圧が20㎜Hgを少し超える程度でも発症します。そのため、初期から中期では自覚症状がほとんどなく、「視野の欠け」などを感じたときには症状がかなり進行しています。「原発緑内障」にはもうひとつ「閉塞隅角緑内障(へいそくぐうかくりょくないしょう)」があります。こちらは40〜60㎜Hgと眼圧が急激に上昇する急性発作を起こすことがあり、見え方の異常のほかに強い頭痛や目の痛みを伴います。治療が遅れると短期間で失明することもあるので、早急に適切な治療を受ける必要があります。

加齢とともに緑内障の頻度は高くなります。ただ、自覚症状のない緑内障が多いため、自分が緑内障であることに気がつかずにすごしている人が少なからずいます。

40歳を過ぎたら健診などをきちんと受けて、「眼圧検査」「眼底検査(目の奥の状態を調べる検査)」「視野検査」などで、定期的に目の状態を調べることをおすすめします。

気になるときは眼科を受診

最新の画像診断であれば発症前の緑内障を診断できます。
治療は点眼で眼圧を下げる「薬物治療」が中心で、
続けることが何より大切です。

異常を指摘されたら
必ず眼科を受診!
視野の欠けを自覚したときには、視神経はかなり大きなダメージを受けており、元の状態に回復することはほとんどありません。そのため、できるだけ視野の欠けを自覚する前に治療を受けるのが望ましいとされています。

見え方に何かしら異常を感じたときや、健診などで「緑内障が疑われる」「眼圧が高め」などと指摘されたときには、早めに眼科を受診しましょう。

眼科医は眼底を直接観察して、視神経のわずかな変化を確認します。さらに、最近は目の奥の網膜や視神経を詳しく調べることができる「三次元画像解析装置(OCT)」を用いることで、ごく初期の緑内障を診断できるようになりました。「開放隅角緑内障」の場合は眼圧を下げる点眼薬が処方されます。眼圧を下げることで視神経が減りにくくなり、視野が保たれるからです。なお、眼圧が正常範囲であっても、治療する前の眼圧よりも下がると症状の進行が抑えられます。眼圧を下げる点眼薬にはたくさんの種類があり、作用の違うものを複数併用することもあります。

最近は、2種類の薬を合わせた配合剤も活用されています。点眼薬が増えると点眼するのに時間がかかりますが、配合剤を活用すれば患者さんの手間や面倒さを軽減してくれます。

点眼薬を用いても眼圧が下がらない場合は、レーザー治療や手術などを行うこともあります。ただし、手術には合併症が少なくないので治療を受ける際はよく説明を受けてください。「閉塞隅角緑内障」の場合、ふさがっている隅角が閉塞しないようにするレーザー治療や手術が必要です。頻度は少ないのですが合併症があるので、主治医とよく相談することが大切です。

緑内障の治療で大切なのは「治療を継続すること」。気長に続けましょう。

(ノジュール2016年12月号からの抜粋です。購入希望の方はこちらをご覧ください。)
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