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開港150周年

“はじまり”の神戸と
アートの六甲へ

文:塩田典子 写真:プランニングケイ(榎木勝洋)

神戸港の開港をきっかけに、私たちの日常に欠かせない文化が
外国から持ち込まれ、発展しました。
珈琲、牛肉、ジャズ…
そんな“はじまり”の地へ。
今も生きる文化を訪ねに、神戸ひとり旅。

開港時の面影を残す
異人館街を歩く
2017年秋、ひとり旅の旅先に選んだのは、港町・神戸。慶応3年(1867)に開港した神戸港は、今年で開港150周年。開港を機に多くの西洋文化が伝えられたことから、神戸が日本発祥の地となり、のちに各地へと広まった西洋文化も数多くある。そんな〝はじまりの物語〞を求めて足を運んだ。

JR新神戸駅からまず向かったのは北野異人館街。この辺りは明治中〜後期、開港をきっかけに移住した外国人が、港を望む見晴らしのよい山の手に洋館を構えたエリアだ。高台にある尖塔上の風見鶏がシンボルの「風見鶏(かざみどり)の館」は、ドイツ人貿易商による明治42年(1909)頃築の建物。アール・ヌーボーの装飾が取り入れられた重厚な内装で、迎賓館やショールームの役割を果たした1階の意匠が凝っている一方で、2階の生活空間は質素な造りなのがドイツ人らしい。対して隣の「萌黄(もえぎ)の館」はアメリカ人総領事の邸宅で、明治36年(1903)築。淡いグリーンの外観や内装が愛らしく、周囲の緑と調和する。対照的な建築スタイルをもつこれらは、2館券の利用でオトクに見学できる。

北野坂を下り、明治41年(1908)開校の旧北野小学校の校舎をリノベーションした「北野工房(きたのこうぼう)のまち」でお買い物。元の教室ごとにショップや工房が入り、そぞろ歩きが楽しい。神戸発ステーショナリーブランド「KobeINK物語byNAGASAWA(コウベインクものがたり バイ ナガサワ)」をのぞいてみる。本店は創業135年の老舗文具店。神戸の風景をあしらった便箋やマスキングテープといったオリジナル文具も魅力的だけれど、ずらりと並ぶ万年筆用カラーインク全65色に目を奪われた。六甲ブルー、波止場グリーンなど神戸の風景をテーマに開発されたインクで、色彩豊かなカラーバリエーションもさることながら、それぞれに込められた想いに神戸愛が感じられ、つい手を伸ばしたくなる。オリジナル万年筆とインクで、旅先から手紙をしたためるのも良さそうだ。

牛肉のはじまりの地で
神戸ビーフシチューを
お待ちかねのランチは元町の洋食店で。神戸は日本で初めて牛肉を販売、日本人が牛肉に親しむきっかけを作った場所。神戸における洋食文化の草分けである「伊藤グリル」は、大正12年(1923)、外国航路のコックを務めた初代が創業。メニューは牛肉を使う洋食と炭火焼きステーキのみで、欧州仕込みのビーフシチューは伝統の一品として受け継がれ、フランスで修業経験をもつ四代目が磨き上げて現在の形に。神戸ビーフシチューは肉の繊維がほろほろと崩れる煮込み加減で、神戸牛本来の風味が残る。ソースは牛肉や野菜からの出汁が効いて濃厚。付け合わせのマッシュポテトに絡めて最後までいただいた。店内はクラシカルな雰囲気ながら堅苦しさはなく、カウンター席もあるので、ひとりでも気兼ねなく過ごせる。

お腹が満たされたところで、アーケードの元町商店街をぶらり。ここは徳川時代の西国街道が起源で、明治7年(1874)に商店街として誕生した。そしてここでも〝はじまり〞に出会うことになる。「神戸凮月堂元町本店(こうべふうげつどうもとまちほんてん)」は創業120年。日本に洋菓子を広める先駆けとなる。代表銘菓ゴーフルは創業から30年後に販売開始。当時は神戸銘菓である大瓦煎餅と同じ製法だったことから、ゴーフル煎餅と呼ばれていたとか。当時の金型や資料は、すぐそばの「神戸凮月堂ミュージアム」で閲覧できる。本店限定商品の中でひときわ目を引いたのが、タータン柄のパッケージ。神戸開港150年を記念して神戸のイメージカラーとして考案された「神戸タータン」があしらわれている。中身はカラフルなサブレで、神戸土産に喜ばれそうだ。

(ノジュール2017年11月号からの抜粋です。購入希望の方はこちらをご覧ください。)
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