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こんこん自噴泉で元気になる

三朝温泉(鳥取県)

文:石井宏子 写真:中西 学

開湯850年を誇る名湯は、世界屈指のラドンを含むラジウム温泉。
全国でも数少ない自噴泉を愉しめる宿や、病院と連携した現代湯治に注目が集まります。

地球の底力を
そのまま温泉で味わう
三朝(みささ)温泉には約80ヵ所の源泉があり高温でラドン含有量が多いことで知られている。自噴泉も多く、源泉が底から湧いている風呂で入浴が愉しめる。ラドンは気体なので、すぐに気化してしまうため湧出したばかりの温泉に入れるのは理想的だ。

旅館大橋にある「巌窟(がんくつ)の湯」は時間によって男女入れ替えで入れる。3つの岩風呂が並んでいるが、それぞれ異なる自噴泉が湯船の底からこんこんと湧いている。下の湯と中の湯はラジウム泉、上の湯がトリウム泉。ラジウムとトリウムは地層の岩石の違いで、ラドン、トロンという気体となって温泉の中に含まれるが分類は同じ放射能泉。成分の違う3つの自噴泉を入り比べて体感できる貴重な場所だ。岩の隙間から滔々(とうとう)と湧き出ているので見ただけではわからないが、入ると熱い湯が自噴する場所を感じることができる。名匠として殿堂入りした知久馬(ちくま)総料理長の創作会席は、豊かな山陰の山海の幸がぎっしり。夕食に供された平目の焼き霜造りは、熱い石でさっとあぶると旨みが口の中に広がった。

現代湯治の楽しみ方を
教えてくれる宿
木屋旅館の自噴泉は三徳川の川底と同じ高さで、地下2mから自噴。階段を下りて貸切風呂へ行く。高い天井の湯屋はタイル造りでレトロな雰囲気。湯船の底からこんこんと湧く源泉は熱いので入る時だけ水を差して気合いで入る。かけ湯をたっぷりして短時間でさっと浸るのが流儀だ。館内には、湯気を溜めて温泉のミストサウナ状にした穴ぐらの湯や、心地よい温度の大浴場、温泉の地熱を利用したオンドルや飲泉もある。泉質は含放射能―塩化物泉で身体の芯まで温まって汗が噴き出てくる。登録有形文化財の癒される空間でゆったり過ごしたい。

放射能泉は入浴だけでなく、吸入する、飲むという方法も併せて利用すると効率よく身体に取り込める。旅館大橋も木屋旅館もこんこんと湧き出る自噴泉の湯船をよく見ると、湯口からかけ流すのではなく、中から少しずつ出るように設計されている。湯の表面が湯船の縁より低い位置を保つことで、気化するラドンを入浴中に吸入して取り込む工夫がされているからだ。

ラドン泉の分類は放射能泉。ラジウムを含む地層から温泉が湧出する際にラジウムがラドンに変化して湯の中に溶け込み、ラドンから放出される微弱な放射線が身体細胞への適度な刺激となって、免疫力や自然治癒力を向上させてくれる。これは運動や日光浴が身体にいいのと同じような意味だと聞いて納得した。ラドンの滞留時間3・8日と短く、長期間体内に残る心配はないそうだ。

温泉街は、外湯、足湯、飲泉場が点在し、散歩しながら少しずつラドンの恩恵を取り込むことができる。藤井酒蔵で試飲したり、泉娯楽場で射的をしたり駄菓子屋てりふり屋へ立ち寄り、ぶらぶら歩くと程よい運動になる距離だ。最終日に宿泊者限定の「鉱泥(こうでい)湿布」を体験した。温泉を混ぜ込んで80℃に温めた鉱泥で、肩こりや腰痛など気になる部分を30分湿布する三朝温泉病院の本格的な温泉療法。骨まで温まる感覚で全身の血行が良くなり肩こりが和らいだ。

(ノジュール2017年11月号からの抜粋です。購入希望の方はこちらをご覧ください。)
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