50代からの旅と暮らし発見マガジン

こだわり1万円宿 第20回

旅ライターの斎藤潤さんおすすめの、一度は泊まってみたい宿を
「予算1万円」に厳選して毎月1宿ご紹介します。

山形県

湯野浜温泉 はまあかり潮音閣

夕日の名所・湯野浜温泉に立つ
木のぬくもりあふれる湯宿

フィンランドサウナもある
ログハウスの浴場
終点湯野浜温泉の一つ手前、うしお荘前でバスから降り、細い坂を登り奇妙なトンネルを抜けて上に出ると、宿の建物が現れた。

地面の格子の間から、温泉地らしく湯気が立ち昇っている。トンネルは駐車場の下を通って、海やバス停への近道になっていた。道を挟んだ下のログハウスも、宿の施設だという。地下道でつながっているらしい。

案内されたのは2階の一番奥の部屋だった。8畳の和室に、2畳の広縁がついている。洗面台、トイレ、冷蔵庫、踏み込み、床の間のような空間もある、こぎれいな部屋だった。窓の向こうには、蒼い日本海が横たわっている。

階段状になった地下通路を抜けて、ログハウスの中に設けられた温泉へ。サウナの本場フィンランドの赤松材を使った建物だ。階段の脇に人造石の滑り台があるのが面白い。昭和13年に4代目当主が、滞在中の子どもに遊んでもらおうと作ったそうだ。

ログハウス内には、ほのかな木の香りが漂っていた。浴室に入る手前にフィンランドサウナがあったが、まず温泉に浸かろう。

浴室には、大きな浴槽とそれに続く寝湯があった。源泉かけ流しのお湯が、注ぎ口から滾々(こんこん)とあふれていて、無色透明の澄んだ温泉の湯触りは柔らかい。ナトリウム・カルシウム塩化物泉だという。肌によくなじむ温泉だった。

湯に浸かってから、フィンランドサウナへ。10分ほど粘ると玉の汗が噴き出し、それを冷水のシャワーで流すとスッキリ。同じことを、もう一度繰り返した。

食の都・庄内の滋味と
郷土の甘味
体が芯から温まる温泉らしく、部屋に戻ってもなかなか火照りが収まらない。外は夕焼け色に染まり、他の宿の上に夕日が沈みかけていた。夕涼みを兼ねて外に出ると、日本海の上にたなびく雲の中に夕日が隠れたり現れたりしながら、やがて見えなくなり天空高い雲がピンク色に染まりはじめた。部屋へ戻り寛いでいると、夕食の迎えが来て食事会場へ案内された。目を引かれたのは、丸ごと一杯のベニズワイガニ。

他にも地元名産平田牧場の三元豚のしゃぶしゃぶ、日本海のブリやタイとサンマの糸づくりの刺身盛合わせ、自家製ごま豆腐と秋鮭のあんかけ、山菜の青みず、こんにゃくの田楽風、クラゲ水族館として有名な加茂水族館から仕入れたエチゼンクラゲを味つけたものの3点盛り、ハタハタの天ぷら、漬物は赤カブとおみ漬け、焼きアラ出汁の吸い物など。

デザートは、郷土食の笹巻にきなこと黒蜜が添えてあった。笹巻の食感や色合い、味わいが鹿児島の灰汁巻(あくまき)にそっくりだと思ったら、やはり灰汁に1日くらい浸けたもち米を笹の葉で包み、灰汁の煮汁に入れて2〜3時間煮るという。1時間半ほどかけて終えた夕食は、地元の食材が満載で充実していた。

さいとうじゅん●1954年岩手県生まれ。ライター。テーマは島、旅、食など。
おもな著書は『日本《島旅》紀行』『島ー瀬戸内海をあるく』(第1〜第3集)、『絶対に行きたい!日本の島』、『ニッポン島遺産』、『瀬戸内海島旅入門』などがある。

(ノジュール2017年11月号からの抜粋です。購入希望の方はこちらをご覧ください。)
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