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地域発レポート 宮城県気仙沼市

自らが育て、発信する
「気仙沼ブランド」

文:堀内志保 写真:堀内孝

恵まれた豊かな漁場で、日本有数の水揚げ量を誇る宮城県気仙沼。
震災後も多彩な魚を地元の人々が手をかけて生かし、美味を元気に発信し続けています。
その核となる商業施設「海の市」から、気仙沼の美食の旅がはじまります。

世界三大漁場の
ブランド食材とは
気仙沼(けせんぬま)湾沿いの岸壁に、たくさんの漁船が停泊している。三陸沖は黒潮と親潮がぶつかる潮目があり、世界的にも有名な漁場の一つに数えられる。この漁場に近い気仙沼は、日本有数の水揚げを誇る。

初夏から晩秋にかけての生鮮カツオの出荷は21年連続日本一。初夏から夏が旬のサメや、冬から春にかけて脂が乗るメカジキも、圧倒的なシェアを持つ。秋のサンマも有名で、年間を通じて目玉となるブランド魚が豊富だ。

気仙沼市魚市場に隣接している「海の市(うみのいち)」は観光案内からミュージアム、ショッピングや食事までできる複合施設だ。

1階の入り口を入ると、「マーメイドスタイル」のロゴが印象的な、おみやげのコーナーがある。「気仙沼阿部長商店(あべちょうしょうてん)」の店舗だ。水産事業や、ホテルなど観光業を展開しているが、東日本大震災で、その大半が被災した。

これまで自信を持って出荷していた魚や加工品が、震災後、他産地に取って代わられるのを目の当たりにし、これまでの流通経路が確固たるものではないことを痛感したという。商品の価値を自ら発信していこうと、加工業者が漁業者と手を取り合って立ち上げたブランドが、「マーメイドスタイル」。11社ほどが参加している。

例えば、「亀洋丸(きようまる)のかつお」は、亀洋丸で一本釣りした獲れたてのカツオを、船で急速冷凍。水揚げ後、サクなどに加工し、販売されている。そのほか、「尾形亀雄のわかめ・こんぶ」、「大喜丸のめかじき」、「辨天丸のさんま」など、それぞれ漁業者の「顔の見える」品が特徴だ。また、「気仙沼ブランド」を代表するフカヒレは、系列ホテルのシェフが監修してスープに。プロの味が家庭でも気軽に楽しめる。「リアスキッチン」は、フカヒレラーメンや海鮮丼などとともに、地元の漁師さんの食べ方なども提案されていて、地域の人たちのブランド食材発信への想いを垣間見ることができる。「メカジキカレーは、気仙沼の家庭では、肉の代わりにメカジキを使っていたことから、メニュー化されました。市内の各店が工夫を凝らし、競っているんですよ」と阿部長商店の小野寺ユミさんは話す。

2階の「シャークミュージアム」では、サメの生態のほか、気仙沼の水産業、震災と復興の歩みについて学べる。日本有数の水揚げ量を誇る気仙沼と切っても切れない関係にある製氷会社「岡本製氷」プロデュースの「氷の水族館」では、水産業を支えてきた高度な製氷技術を使って、三陸の魚たちを凍氷し、展示している。

震災も乗り越えた
伝説の「かえしたれ」
「鼎・斉吉(かなえ・さいきち)」は、気仙沼の内湾を見下ろす高台にある。斉吉商店(さいきちしょうてん)の看板商品は、4日かけて炊く「金のさんま」。サンマの佃煮は、各家庭で作られてきた、気仙沼のソウルフードの一つだ。毎日継ぎ足される「かえしたれ」は、工場や店など全てが被災した中で、従業員によって持ち出され、津波に流されながら、奇跡的に無事だったものだ。この「かえしたれ」で加工を再開した「金のさんま」は、2015年、復興庁が主催した「世界にも通用する究極のお土産」にも選ばれた。「震災後、応援してくださった方々から、『三陸の魚が美味しいと、初めて知りました』という声を何度も聞きました。漁師さんをはじめ、たくさんの人に支えられている気仙沼の魚を、もっと広く知ってもらいたいと考えています」と専務の斉藤和枝さんは熱く語る。

(ノジュール2018年4月号からの抜粋です。購入希望の方はこちらをご覧ください。)
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