50代からの旅と暮らし発見マガジン

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神聖な地で厳かな時を

世界遺産の宗像大社と
花いっぱいの宮地嶽神社

文:宮本喜代美 写真:松隈直樹

心ゆくまで神聖な空気に浸れるのも、ひとり旅だからこそ。
由緒ある神社の凛とした空気感や洗練されたお社の造形、季節の花々など五感を研ぎ澄ませ、
目に見えるものも見えないものも、どちらも感じる旅に出かけましょう。

「道」の神様に
幸多き人生への導きを願う
旅に出かける前に宗像大社(むなかたたいしゃ)についておさらいをしておこう。宗像大社とは、沖ノ島(おきのしま)にある「沖津宮(おきつみや)」と大島の「中津宮(なかつみや)」、そして宗像市の少し内陸に位置する「辺津宮(へつみや)」の三宮で構成されている。沖津宮には長女神の田心姫の神(たごりひめのかみ)が、中津宮には次女神の湍津姫の神(たぎつひめのかみ)が、辺津宮には末女神の市杵島姫の神(いちきしまひめのかみ)が祀られており、三柱の女神は総称して宗像三女神と呼ばれている。今回はまず、宗像三女神信仰の中心地である宗像大社辺津宮から旅を始めよう。

午前8時すぎ、団体旅行者がさほど多くない時間帯に辺津宮に到着。昨年7月「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群として世界遺産に登録されて以降、一段と参拝者が増えていると聞き、朝一番で参拝することにした。澄んだ空気が実に心地よい。

宗像大社に祀られている宗像三女神は、日本書紀には「道主の貴(みちぬしのむち)」=道の神様として記されており、古くは海上交通の守護神として、現在ではあらゆる道の神様として信仰されている。ちなみに、神々の名前の中で「貴」という字が使われているのは伊勢神宮の天照大神(あまてらすおおみかみ)の別名『大日靈の貴(おおひるめのむち)』と、出雲大社に祀られる大国主の命(おおくにぬしのみこと)の別名『大己貴(おおなむち)』のみという。格式の高い神がこんな身近に御座されるとは…。そのご威徳にあやかるべく、拝殿にて市杵島姫神に、今日の旅の安全と、幸多き人生へのお導きを祈願した。

参拝後は、境内の奥にある高宮祭場(たかみやさいじょう)へ。高宮祭場は市杵島姫神の降臨地と伝わり、日本の祈りの原形を今に伝える全国的にも希少な古代祭場。緑豊かな高宮参道を森林浴しながら歩くこと約10分。木立が途切れた先、木々の間にぽっかりと、高宮祭場が現れた。神々しい木漏れ日が包む祭場は、息をのむほどの神域感が漂う。人工的なものがほとんどないため、眺めていると、ふと有史以前にタイムスリップするような錯覚さえ覚えるほど。パワースポットと言われているのも頷ける、なんとも清浄な場所である。高宮祭場へ来られた導きに感謝しながら、手を合わせた。

清々しい空気を胸いっぱいに吸い込んで高宮祭場を後にし、国宝8万点が収蔵・展示されている「神宝館(しんぽうかん)」へ。館内には宝物や美術工芸品、文書などの文化財が並び圧巻だ。なかでも5〜6世紀に当時の技術の粋を集めて作られた純金製で花の文様が美しい金製指輪と、古墳時代3世紀頃のもので中国の伝説の神仙や霊獣が緻密に描かれている三角縁神獣鏡(さんかくぶちしんじゅうきょう)は必見。どちらも国宝で、1500〜1800年前のものとは思えぬ気品と輝きを放っている。

旅客船に揺られ
原生林に包まれた大島へ
辺津宮近くのバス停からバスに乗り約10分、大島行きの旅客船「しおかぜ」とフェリー「おおしま」が発着する神湊(こうのみなと)港に到着。港からは望めないが、大島、沖ノ島と朝鮮半島に向けて道標のように島が連なっている。約10㎞先の大島までは旅客船でわずか15分、短いながらも優雅な船旅を愉しもうと乗り込んだのだが…、玄界灘の荒海を甘く見てはいけない。この日は天候が悪く、小さな旅客船は右に左にと揺れる、揺れる。古代はもっと簡素な船でこの荒波を乗り越えていたのかと、命がけの渡航を思うと、神に祈る気持ちも分かろうというもの。海を渡る勇者を守り導いてきた宗像三女神の御神威に改めて思いを馳せた。「普段はこんなに揺れませんよ。晴れた日はコバルト色の海がとても綺麗です」と乗り合わせた地元の人が教えてくれた。

「海の正倉院」とよばれた
神宿る島を遙拝(ようはい)する
大島は周囲約15㎞の福岡県最大の離島で、小高い山林や原野が大半を占める自然豊かな島。海釣りなどのレジャーも愉しめる島だ。

中津宮は大島港のほど近くにあり、約60段の石段を登った先に現れる本殿は、辺津宮と海を隔てて向かい合って鎮座している。辺津宮と中津宮、沖津宮遙拝所(おきつみやようはいじょ)を結ぶ延長線上に、絶海の孤島・沖ノ島が浮かんでいる。島そのものが御神体となっている沖ノ島は立ち入りが禁止されているため、大島から遙拝するのが古来からの習わしだ。小高い丘の上に立つ沖津宮遙拝所で、海で結ばれた神域の広大さに思いを巡らせながらじっと目をこらすと、沖ノ島の島影が見えたような気がした。

昼食は最初から魚と決めていた。大島は魚がおいしいことで知られており、新鮮さは言わずもがな。漁師のご主人が営む「灯明の宿ふじ島」では、和食の料理人が調理を手がけるため味もピカイチ、2名以上なら宿泊もできる。

(ノジュール2018年5月号からの抜粋です。購入希望の方はこちらをご覧ください。)
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