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ソロモン王の秘宝伝説が眠る

剣山(つるぎさん)

文:中上晋一 写真:宮田清彦

古くより霊山として知られ、
信仰と伝説が息づく剣山は登山道も山頂も眺望に優れていて、
キレンゲショウマなど高山植物も愉しめます。
初心者でも登山の醍醐味が手軽に味わえる百名山です。

日本屈指の
秘境にそびえる信仰の山
標高1955mと四国では石鎚山(いしづちさん)に次ぐ高さを誇る剣山(つるぎさん)は、古くから修験道で知られた山。また、平家伝説が多く残っていることでも知られる。現在は「日本百名山」に選ばれ、登りやすく展望もよいことから登山者に人気が高い。

近年、さらに山の人気を高めたのは宮尾登美子の小説『天涯の花』(1998年刊)だろう。剣山の四季を背景に無垢な魂を持ち続ける主人公・珠子の成長と恋を描いた感動の物語だ。小説に登場するキレンゲショウマという花に惹かれて訪れるハイカーが増えたという。

貞光(さだみつ)から、車のすれ違いもままならないほど細い国道438号を剣山方面へと分け入る。登山は明日にして今夜は「ラフォーレつるぎ山」に前泊。標高約1500m、自然に囲まれた快適な宿だ。剣山の稜線を眺めながら食事をしていると、眼前の夫婦池の畔で野生の鹿たちが戯れているのが見えた。

快適なリフトと、
天空を行く気分の登山道
翌日は、見ノ越(みのこし)で剣神社と円福寺に参拝。剣神社は『天涯の花』の舞台となった場所で、宮尾登美子の文学碑が建っていた。

見ノ越駅からのリフトは1750mの西島(にしじま)駅まで、標高差約330m、距離830mを15分で結んでいる。足元に高山植物を見ながらの楽しい時間だ。西島駅から山頂までは何本かルートがあるが、大剣(おおつるぎ)神社から御神水(おしきみず)を経由して次郎笈(じろうぎゅう)への縦走路と合流する少し回り道のコースを選んだ。ブナ林の合間に眺望が開ける快適な登山道だ。やがて「天地一切の悪縁を絶ち、現世最高の良縁を結ぶ」といわれる有名なパワースポット、大剣神社に着く。背後にそびえるご神体の巨大な岩塔を見ながら少し下ると、環境省の「名水百選」に選定された御神水があった。

次郎笈分岐へ向かう道は右に次郎笈、左に剣山を望む開放感あふれる道だ。次郎笈は標高1930m、四国第3位の高峰である。次郎笈の「笈」は修験者が背負う仏具や生活用品を収める箱のことで、剣山も古くから「太郎笈」と呼ばれ兄弟峯とされてきた。次郎笈を背に剣山の南斜面を登る。ゴツゴツと岩の露出した急坂で、今回のコースで一番辛い登りが30分ほど続く。やがて、木道に導かれて山頂に達すると、そこは「平家の馬場」と呼ばれるクマザサが生い茂る草原で、360度の大展望。1800m級の山々が横たわり、遠く石鎚山や伯耆大山まで見渡せる。

(ノジュール2018年8月号からの抜粋です。購入希望の方はこちらをご覧ください。)
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