50代からの旅と暮らし発見マガジン

こだわり1万円宿 第29回

旅ライターの斎藤潤さんおすすめの、一度は泊まってみたい宿を
「予算1万円」に厳選して毎月1宿ご紹介します。

北海道

利尻うみねこゲストハウス

バックパッカーや島旅好きが集う利尻島のゲストハウス

島ガイドが営む
港のそばの小さな宿
船から鴛泊(おしどまり)港に降り立つと、港を挟んだ反対側に小高いペシ岬がそびえ、麓の海岸に白っぽい2階建てが見えた。岸壁に沿って数分歩くと、薄いグレーを基調にした壁に「利尻うみねこゲストハウス」の文字が浮かんでいた。

中には広々したロビーとフロント、幅の広い階段、談話室島時間と書かれた広間が見えた。玄関には自転車が何台か並び、ロビーの一角には荷物置場やソファー、畳3枚ほどの小上がりもある。

宿を経営する西島徹さんとは、毎年11月に東京池袋で開催される「全国島の祭典 アイランダー」で知り合った仲。徹さんがちょうど外出していたので、奥さんの加奈子さんが案内をしてくれた。

電動アシスト付自転車が、1日2000円。一周55㎞ある島を巡るには、坂が多いのでこれがお勧めだとか。ママチャリはゲスト専用で、買い物や温泉、食事に行くときなど、1時間以内は無料で使うことができる。

利尻富士をのぞむ
談話室で花咲く旅話
広々とした湯船のある浴室、洗浄機付き便座のトイレ、こぎれいな洗面所など、水回りは女性でも安心。2階には、施錠ができる無料のロッカーもあった。

個室を予約していたが、男女別相部屋のドミトリーも見せてもらった。個室はもちろん、ドミトリーも広々としている。1人3畳ほどのスペースが確保されているので、洗濯物を干すこともでき、大きな荷物も広げられるという。

バイク旅や自転車旅、北海道放浪長旅の人もやってくるので、洗濯機・乾燥機(有料)も備えてあるし、洗車用ホースとウエス(雑巾)は無料で貸してくれる。

一通り宿の施設を確認して部屋に荷物を置き、談話室をのぞく。まず目についたのが本や雑誌が詰まった大きな本棚が3つ。利尻礼文に関する本や島本・旅本、季刊『しま』や季刊『リトケイ』などが並んでいた。

談話室はフリースペースで、読書、昼寝、食事の場などに使われる。夜は、泊まり合わせたゲストたちの情報交換の場や飲み会の場としても利用されている。

一角は、自炊用のキッチンになっていて、IHクッキングヒーター、電子レンジ、卓上ガスコンロ、トースター、共同冷蔵庫、基本的な調理器具、食器、調味料などが揃い、島食材を入手して料理することも可能。利用時間は23時までで、その後は消灯だ。

建物は、廃業した旅館を居抜きで購入したもの。移住して14年になる徹さんは島ガイド、利尻歴23年になる加奈子さんはバスガイドをしていて島人たちの信頼も篤く、港の目の前という恵まれた物件を入手できたという。

その晩は、利尻昆布ラーメンにもやしや宿備え付けのとろろ昆布をたっぷりのせて夕食とし、その後いろいろ摘まみながら、西島さんと消灯時間まで語り、飲んだ。

翌朝、部屋の窓の向こうで、利尻富士が爽やかに微笑んでいた。

さいとうじゅん●1954年岩手県生まれ。ライター。テーマは島、旅、食など。
おもな著書は『日本《島旅》紀行』『島ー瀬戸内海をあるく』(第1〜第3集)、『絶対に行きたい!日本の島』、『ニッポン島遺産』、『瀬戸内海島旅入門』などがある。

(ノジュール2018年8月号からの抜粋です。購入希望の方はこちらをご覧ください。)
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