いつまでも元気に旅しよう!病に勝つカラダ 第5回

いつまでも若々しく元気に活動したいし、旅行にも出かけたい。
そのために病気にならないカラダ作りを予防医学の観点から毎号お届けします。

関節回しで元気に

福辻鋭記先生
(文:大政智子 イラスト:安齋 肇)

私たちの体の骨と骨を結ぶ関節。
この関節が柔軟に動くおかげで、私たちは体を自由に動かし健康的な状態を保っています。
しかし、関節が硬く、可動域が狭くなると、体に余分な負担がかかり不調や病気につながります。
夜寝る前の関節回しを習慣に、関節の柔軟性を保って毎日を元気に過ごしましょう。

体が硬いと病気のリスクが高まる!?鍼灸(しんきゅう)師として、30年以上も患者を診てきた福辻鋭紀(ふくつじとしき)先生は、「関節が硬い人ほど、さまざまな体の不調に悩まされている人が多く、治りも遅い」と言います。

骨と骨のつなぎ目である関節。この関節の柔軟性と健康は密接に関係しています。関節が硬く、柔軟性が低くなると、可動域が狭まり、筋肉も緊張状態となります。緊張であちこちがギューッと締まった状態の体は、動かしにくいだけでなく、結果として、腰痛や肩こり、生理痛や性欲減退などに悩まされることになります。また、その状態では寝ているときもリラックスできず、疲れやすくなったり、太りやすくなるばかりでなく、心にも大きな影響を与えます。

体の硬さと病気のリスクについて、日本の国立健康・栄養研究所が行った興味深い調査報告があります。

成人526人(男性178人、女性348人)を対象に、若年、中年、高齢の3群に分けて柔軟性を調査。両膝を曲げずに座位姿勢の状態で前屈(長座位体前屈)をしてもらい、指先の位置からの柔軟性をチェックし、そのあとで血管の状態を調べたところ、どの年齢層でも柔軟性が低い人ほど動脈硬化が進行していたことが確かめられました。特に、中年と高齢では体が硬い人ほど動脈硬化の進行が早いことが示されたのです。

動脈硬化は心臓病や脳卒中を招く大きなリスクとなるので、体の硬さは、寿命にも直結している可能性があると考えられます。体の硬さを解消するために、福辻先生が勧めているのが、寝る前の関節回しです。

すべての関節は朝起きたときには動かしにくい状態になっていますが、起きて、動いているとほぐれてきます。ところが、夕方になると疲労物質がたまって再び動きが悪くなり、関節の可動域も狭くなってしまいます。

夜に動かしにくくなった関節を回すと、血流がよくなって老廃物の除去が促され柔軟性が戻りやすくなります。

足首、手首、肩、ひざなど、関節はいくつもありますが、なかでも福辻先生が勧めているのが足首回しです。足首周辺には、疲れや性ホルモンに効くツボがたくさんあり、疲れのリセットにとても効果的だからです。足首回しの効果は現れやすく、早ければ2〜3日くらいで実感できます。

夜の関節回しで
疲れをリセットしよう
実際に、足首を回してから眠っているという患者さんからは、「翌日すっきり起きられた」「足のむくみがとれた」「足首が細くなった」「疲れにくくなった」といった感想が寄せられています。足首回しは、全身の血行がよくなるので血圧も下がります。具体的にやり方をご紹介しましょう。

足首回しのコツ

  1. まずは左足から。左手で左足首をつかみ、右手で左足の指先をにぎって大きく回す。内回し、外回し、それぞれ10〜20回行う。右足首も同様に。
  2. 両手で左足首をギュッとつかんだ状態で(足首の力だけで)回す。できるだけ大きく動かすのがポイント。内回し、外回し、それぞれ10〜20回。右足首も同様に。
  3. 左の足先を上に引っ張ったり、下に向けて伸ばし、アキレス腱やふくらはぎの筋肉を緩める。右足首も行う。
  4. 左足の甲を手で握り、左右にひねる。ほぐすようにして大きく動かす。

時間があれば、足首以外の関節もどんどん動かすといいでしょう。首や肩関節はシンプルです。大きくゆっくりと回しましょう。首は右回し、左回し。肩関節は前回し、後ろ回しを交互に行います。足首同様に、手首の回し方もちょっと工夫すると効果が倍増します。

手首回しのコツ

  1. 両手を一度ぶらぶらさせてから、大きく回す。内回し、外回し、それぞれ10〜20回行う。
  2. 左腕を胸の前に上げ、右手で左手首を握り、関節を伸ばすようにして指側に引っ張り、5秒間キープする。右手首も同様に行う。

その日の疲れはその日のうちに解消するのが、翌日からまた元気に動くための秘訣。特に、足首や手首は疲れがたまりやすく、けがや不調の温床になります。そうなる前に、夜の関節回しを習慣にするといいでしょう。

ふくつじ としき●アスカ鍼灸治療院院長。
鍼灸師として30年以上のキャリアと10万人を超える治療実績があり、テレビ番組で『日本の名医50人』に選ばれたこともある。
美容鍼灸の草分け的存在で、女性誌や健康雑誌、テレビなどでも幅広く活躍中。
asuka-sinkyu.com/wp

(ノジュール2017年5月号からの抜粋です。購入希望の方はこちらをご覧ください。)
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