いつまでも元気に旅しよう!病に勝つカラダ 第8回

いつまでも若々しく元気に活動したいし、旅行にも出かけたい。
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野菜から食べて健康に

梶山靜夫先生
(文:大政智子 イラスト:安齋 肇)

血糖値が高い状態が続くと、糖尿病はもとより、認知症、がん、脳卒中、心筋梗塞など、病気のリスクが跳ね上がります。
血糖値の上昇をできるだけ抑えることが、健康長寿への第一歩。
「食べる順番を見直す」だけという、すぐに実践できる健康法をご紹介します!

血糖値が高いと全身の老化が進む血糖値とは血液中のブドウ糖の量のことです。健康な人の空腹時の血糖値は70〜109㎎/㎗程度に保たれていますが、食事を摂ると血糖値が一時的に上昇します。どれくらい上昇するかは、食事に含まれている糖質の量や、その人の体質などによって変わりますが、私たちの体には血糖値をコントロールするメカニズムが備わっていて、食後1〜2時間で空腹時と同じ状態に戻るようになっています。

ところが、このメカニズムは加齢によって低下するほか、20〜30代でも暴飲暴食をしていてこの機能がうまく働かなくなっている人もいます。そうなると、血糖値がうまく下がらず、ずっと高い状態が続くことになります。これがいわゆる糖尿病です。

また、高血糖状態が続くと、血管の老化が促されて動脈硬化が進行し、認知症や脳卒中、心筋梗塞(こうそく)のリスクも高まります。そればかりか、がんのリスク要因になることも最近わかってきました。

高血糖状態がよくないとされるのは、タンパク質と余分な糖が結合して、AGEs(エージーイー)(糖化反応最終産物)という老化物質がつくられるからです。AGEsが皮膚に沈着すると肌がくすんで弾力がなくなりますし、血管に沈着すると血管壁のしなやかさが失われて動脈硬化が進行します。

AGEsを抑える方法は実はとてもシンプルで、血糖値の上昇をできるだけ抑えればいいのです。血糖値を上げないために極端な糖質制限を行う人もいますが、お米をまったく食べないのは栄養バランスの乱れを招き、現実的ではありません。

そこで、梶山内科クリニック院長の梶山靜夫先生らは、健康的に無理なく血糖値の上昇を抑える方法を研究し、「食べる順番療法」を考案しました。

これは食べる内容は同じで順番を変えるだけ。簡単に言えば、「野菜から食べる」だけで血糖値の上昇が抑えられます。

梶山先生は、食べる順番と血糖値の変動に注目し、10年以上かけてデータをとり研究を続けてきました。その結果、炭水化物を先に食べることで血糖値は急上昇。しかし、食物繊維が豊富に含まれる野菜を先にお腹に入れておくと、後から食べたものの糖が緩やかに吸収され、血糖値が上がりにくいことがわかりました。

現在、「食べる順番療法」は糖尿病の食事療法として認められています。

野菜から食べて、ごはんを最後に食べるやり方はいたってシンプルです。まずは「野菜のおかず」を食べます。サラダ、お浸し、和え物、ナムル、ラタトゥイユ、温野菜、具だくさんみそ汁などを、よく噛んでゆっくりと食べます。海藻やきのこ、こんにゃくなども野菜のおかずに入ります。

野菜のおかずを食べきったら、肉や魚介類、豆腐(大豆製品)、卵、チーズなどタンパク質を多く含む、メインのおかずを食べます。

ごはんやパン、めんなど糖質を多く含む(血糖値を上昇させる)主食は、最後に腹八分目にいただきます。おなかいっぱいになるまで食べるのではなく、もう少し食べたいなというくらいに抑えるのがポイントです。

食べる内容を変える必要はないので、あれを食べられない、これも食べられないという制限がなく、ストレスがたまりません。また、ごはんを最後に食べるようにすると、自然に食べる量が減っていきます。

おかずとごはんを別に食べると、それまでの味つけを濃く感じるようになり、自然に薄味になって高血圧対策にもつながります。

この「自然に」というところがミソで、「血糖値のために」「血圧のために」という義務感ではなく、無理なく自然に健康的な食べ方が身につきます。

ひとつだけ注意したいのが、食べるスピードです。いくら野菜から食べても、早食いだと血糖値は上がりやすくなります。血糖値の急上昇を避けるためには、よく噛んでゆっくり食べることも大切です。野菜のおかずを食べ始めてからごはんを食べるまでは、10分以上かけるようにしましょう。

もうひとつ、陥りやすいのが糖質の多いかぼちゃ、れんこん、いも類、空豆、果物などを野菜と勘違いして最初に食べてしまうケースです。これらは血糖値を上げやすいので、ごはんなどと同じグループと考え、最後に食べるようにしてください。

かじやま しずお●梶山内科クリニック院長。
1977年、京都府立医科大学卒業後、同大学第一内科などを経て2004年より現職。専門は糖尿病と栄養学。
食べる順番による血糖値の変化を10年以上研究し、糖尿病の食事療法「食べる順番療法」を考案。
kajiyama-clinic.com/

(ノジュール2017年8月号からの抜粋です。購入希望の方はこちらをご覧ください。)
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