50代からの旅と暮らし発見マガジン

こだわり1万円宿 第25回

旅ライターの斎藤潤さんおすすめの、一度は泊まってみたい宿を
「予算1万円」に厳選して毎月1宿ご紹介します。

鹿児島県奄美大島

開運の郷やけうちの宿

黒糖焼酎の蔵元が営むログハウスコテージ

広々と開放的な
南国感あふれるコテージ
奄美大島の中心部、名瀬(なぜ)からバスを2回乗り継ぎ、やけうちの里で下車すると、斜向かいには地元物産の販売所「うけん市場」があり、裏は広々とした総合運動公園になっていた。

バス停の先にある地域福祉センター「やけうちの里」の奥に、「開運の郷やけうちの宿」があった。やけうちは漢字で書くと《焼内》で、宇検(うけん)村の昔の名前だ。

黒糖焼酎れんとで有名な開運酒造系列の宿で、コテージとホテルタイプの「きょらむん館」がある。フロント脇に並ぶ、自社製品が安い。日中は近くにある工場の見学もでき、試飲は無料。工場でしか買えない銘柄もある。

コテージ「サネン」のキーを受取り、ログハウス風の建物へ向かう。周辺はサンゴのかけらと芝生、そしてモンステラ、アダン、ハイビスカス、サネンなど緑濃い亜熱帯植物に囲まれていた。

中は広々としたツインルームで、テーブルと椅子を置いても、まだ十分に空間がある。冷蔵庫や自炊施設も整っているので、地元食材を買ってきて調理することも可能だ。また、バスタブ付きの風呂や洗濯機がある洗面所、洗浄機付き便座のトイレも備わっていた。外にはテラスがあり、シャレたチェアも並んでいる。

コテージは全部で5棟ある。敷地の北側は海だが、手前に細長い池があり、その向こうに入り組んだ焼内湾が見えた。敷地の奥には「きょらむん館」があり、突き当りの建物は生涯学習センター「元気の出る館」だった。

窓に歴史民俗資料展示室の看板が掲示されていたので、見学することに。声をかけると担当者が、急いで照明をつけてくれた。ノロの祭祀道具や倉木崎の海底遺跡資料などが目玉だが、個人的には隣の須古(すこ)集落に建てられた我が国初の白糖工場の資材だった輸入レンガが興味深かった。

コテージに戻ってから、やけうちの里の中にある「やけうちの湯」へでかけた。部屋風呂でもいいのだが、宿泊者は無料券がもらえるので、大浴場へ行くことにしたのだ。ミストサウナ付きのいこいの湯と遠赤外線サウナ付きのやすらぎの湯があり、隔日で男女が入れ替わる。地元の人たちは、銭湯として愛用しているようだった。

併設レストランで味わう
奄美のスローフード
夕食は、村人も食べにくる宇検食堂で供された。本日のメニューが用意され、島食材中心の郷土料理が10品ばかり、次々と運ばれてきた。先付は、モズク酢、地豆豆腐、豚耳燻製。お造りは、炙りカンパチ。赤ウルメの味噌サネン焼き、豚軟骨と野菜の煮物、ソデイカの味噌漬け、トビンニャとハンダマのごまだれかけ、宇検産クルマエビと島野菜の天ぷら、鶏飯茶漬け、カシャ餅とあく巻きなど。

前日、名瀬の小料理屋かずみで、心尽くしの郷土料理を堪能していたし、同様の食材が多かったにもかかわらず、異なるアレンジでまったく別物をいただいた満足感があった。

さいとうじゅん●1954年岩手県生まれ。ライター。テーマは島、旅、食など。
おもな著書は『日本《島旅》紀行』『島ー瀬戸内海をあるく』(第1〜第3集)、『絶対に行きたい!日本の島』、『ニッポン島遺産』、『瀬戸内海島旅入門』などがある。

(ノジュール2018年4月号からの抜粋です。購入希望の方はこちらをご覧ください。)
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