50代からの旅と暮らし発見マガジン

人気の特集

祝・世界遺産決定!

長崎・天草
潜伏キリシタンと巡礼路

文:河村規子(ノンブル) 写真:松尾順造

「長崎・天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」
―16〜19世紀、キリスト教が禁止されていた日本において、密かに信仰を守り続けた人々がいた。
その信者たちが暮らした集落や心の拠り所とした史跡、復活の機会を得た教会など、計12の遺産群が、この7月、日本の22番目の世界遺産に登録された。
キリスト教信仰が露見したら命をも奪われた時代に、250年もの長きにわたり、親から子へと密かに思いを継承していった彼らの信仰心を支えたものは何だったのか?
長崎と天草地方に伝わる禁教、潜伏、そして復活の奇跡に触れる旅へ―。

復活―信徒発見とマリア像 長崎駅から路面電車で大浦天主堂へ向かうと、港や洋館、出島など、長崎らしい風景が旅心をくすぐる。大浦天主堂は、日本の開国により来日した外国人宣教師が1864年に建てた現存する日本最古の教会建築。堂内はステンドグラスから差し込む光りで幻想的な雰囲気に包まれていた。側廊奥の小祭壇には、信徒発見を見守ったというマリア像が静かに佇む。大浦天主堂が創建された当時、日本はまだ禁教令が敷かれていた。宣教師たちは「いつかキリシタンの末裔が現れるかもしれない」と微かな希望を抱き、正面に日本語で「天主堂」と掲げた。

その出来事が起こったのは1865年3月17日。浦うら上かみの潜伏キリシタン10数人が大浦天主堂を訪れ、一人の女性がプティジャン神父に近寄り、信仰を告白したのだ。「我らの胸、あなたの胸と同じ」――厳しい弾圧によって一人も居なくなったと思われていたキリシタンが、実は7代に渡って信仰を守り続けていたという奇跡が明らかになった瞬間だった。「このマリア像は150年間ずっと天主堂の中に飾られているんです」と話すのは、大浦天主堂キリシタン博物館の横尾和広さん。この愛に満ちたマリア像を見た江戸時代の潜伏キリシタンたちの感動はいかばかりであったろうか。

大浦天主堂に隣接する旧羅ら典てん神しん学校と旧長崎大司教館は、らせん階段やバルコニーなど、明治の建築とは思えない優美さを兼ね備えている。館内は今春から博物館として生まれ変わり、キリシタン潜伏期の貴重な資料の数々が展示されている。

(ノジュール2018年8月号からの抜粋です。購入希望の方はこちらをご覧ください。)
ご注文はこちら

定期購読のお申し込み

バックナンバー

書店一覧