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あえて1泊して非日常を楽しむ

女性のための“アートな銀ぶら”

文:坂本真由美 写真:橋本剛志、伏木 博

女性にとって、銀座はショッピングの街である一方、気軽にアートに触れられる場所としてもおススメです。
立ち並ぶ画廊のウィンドウに目をやりながら、あちこちに美的好奇心を刺激してくれるスポットに出合えるのが銀座。
ちょっと日常を離れて、1泊2日でゆったりとしたアートの旅をしてみませんか。

アートな本と
雑貨に囲まれて
華やいだ気分で銀座へ“アートな”お出かけ。まずは4丁目交差点から中央通りを新橋方面に向かって歩こう。最初のお目当ては「SHISEIDOTHESTORE」。エステやヘアメイク、フォトスタジオでの写真撮影など、美に関するさまざまなことを体験できるスポットだが、その4階にある「SHISEIDOTHETABLES」では、ミュージアムさながらにキュレートされたアートな本や雑貨に出合うことができる。

エレベーターを降りると、ショップとカフェのキッチンがあり、その奥は柔らかに差し込む自然光に満たされた空間。そこに書棚と大きなテーブルが配されている。シンプルな書棚に大型の画集や貴重な写真集が並んでいて、アートな表紙に惹かれて何冊も手に取る。本のセレクションは季節で替わり、今は「食」をテーマにした本が並んでいる。本をテーブルに広げ、思わずページをめくり続けてしまう。

オリジナルの雑貨が揃うショップも目に楽しい。目を引いたのは資生堂の企業文化誌『花椿』で連載していたアーティスト、フィリップ・ワイズベッカー氏のドローイングをプリントした一筆箋、口紅やアイラッシュカーラーをかたどったオリジナルピンバッジなど。ここでしか販売していないものもあるという。アートと美の融合を感じるひとときを過ごすことができた。

美しい茶房もまた
アートな体験
街のウィンドウを眺めつつぶらり。次に訪れたのは1丁目にある「HIGASHIYAGINZA」。ここはアートなティータイムを過ごすのに相応しい。空間はシンプルでモダンだが、季節の生菓子やオリジナルブレンドの茶葉、器などを取り揃える和のサロンは心地よい佇まい。併設する茶房は現代の“日本のティーサロン”として独自のお茶の楽しみ方を提案している。中央のテーブルには、季節を感じる設えが用意され、お茶を淹れるためのお湯がしゅんしゅんと沸いている。ゆったり配されたテーブルと、座り心地のいい椅子。寛いで過ごせるよう配慮された空間となっている。

美しさで話題の、和のアフタヌーンティー「茶間食(さまじき)」をいただく。美しい盆に繊細な和菓子、小さな籠にはおいなりさんがふたつ。そして甘いものだけでなく、胡麻豆腐や玉子焼き麩の焼きなどの創作的点心が並ぶ。スタッフが釜から柄杓でお湯をすくい、急須に注ぐその所作を見ているだけで気持ちが和らいでくる。丁寧に淹れられたお茶はしみじみと味わい深い。菓子もお茶もともに主役。そして何より、美しいものを味わう時間の豊かさが嬉しい。銀座の画廊というとちょっと敷居が高いイメージがあるが、銀座には気軽に入れる企業ギャラリーもたくさんある。そうした場所では、モダンアートなど、今を感じる親しみやすい企画展も多い。会期が一週間程度という短い展示もあるが、それだけに新しいアートに触れやすいともいえる。

中央通りをさらに京橋に向かって歩くと、住まいに関連したさまざまな展示を楽しめる「LIXILギャラリー」がある。大小3つの展示室があり、それぞれ異なる企画展を行なっている。今回訪れたときは、アートディレクター清水敏男氏監修の「枯山水サラウンディング」の展示が開催されていた。ビルの中に現れた枯山水。テーマは音によって想起される視覚。竹に触れ、落ち葉を踏むと、スピーカーから風の音が聞こえてきた。街の喧騒のなかを歩いてきたのに、自然に包まれているという不思議な感覚が味わえる。会期は12月25日まで。

先ほど立ち寄った「HIGASHIYAGINZA」のひとつ上のフロアには「ポーラミュージアムアネックス」もある。ポーラ・コレクションから12月に開催される写真家レスリー・キーまで、現代アートの旗手の企画も多い。

(ノジュール2018年12月号からの抜粋です。購入希望の方はこちらをご覧ください。)
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