いつまでも元気に旅しよう!病に勝つカラダ 最終回

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「壁ドン!ストレッチ」で体がよみがえる!

川村 明先生
(文:大政智子 イラスト:安齋 肇)

寝たきり目前だった高齢者も回復すると話題の「ひざ裏のばし」。
ひざや腰が痛くて動けない、高血圧で運動ができないなど、トラブルを抱えていても無理なくできるのが魅力です。
今月は「ひざ裏のばし」のなかでも基本である「壁ドン!ストレッチ」をご紹介します。

ひざ裏をのばすと脳も体もよみがえる姿勢が整い、さまざまな不調が改善すると注目を集めている「ひざ裏のばし」は、外科医である川村明先生(かわむらクリニック院長)がヨガをもとに考案したメソッドです。考案のきっかけは、腰が曲がってかたまってしまい、布団の上でも仰向けで寝られない患者さんから「このままだと寝たきりになります。助けてください」と涙ながらにお願いされたことでした。

西洋医学の観点では無理な依頼でしたが、ヨガを学び、鍼灸師の妻がいて東洋医学にも精通していたことから、挑戦してみようと思ったそうです。

患者さんは腰に問題を抱えていましたが、川村先生が着目したのはひざ裏でした。ひざ裏とはひざ小僧の裏側にある筋肉のことです。実は、立つ、歩く、走る、座る、跳ぶなど、日常的に行っている動作は「ひざ」が中心となります。ひざの周辺にはいくつもの筋肉があり、必要に応じて筋肉や骨を動かしていて、ドアの蝶ちょう番つがいのような役割を担っています。ひざの周辺の筋肉、特に裏側がかたくなると、ドアの開け閉めがうまくできないように、体がスムーズに動かせなくなるのです。

ひざ裏がかたくなるとひざが伸びなくなり、前側の太ももの筋肉が緊張して骨盤が後ろに傾きます。腹筋に力が入らず、上半身が前屈みの姿勢になって腰や背中が曲がります。高齢者によくある、腰が曲がって首や肩が前に出てしまうゆがんだ姿勢は「ひざ裏がかたくなる」ことから始まるのです。

ひざ裏がのびると、体の前側と後ろ側の筋肉の緊張が均等になって自然と姿勢がよくなります。肩や胸が開くので呼吸が深くなり、体幹に力が入りますし、内臓の働きがよくなります。

川村先生は5年前から2000人を超える方を指導し、体験者からは「腰が楽になった」「背中が伸びた」「歩きやすくなった」など、さまざまな報告が届いています。きっかけになった患者さんは半年で腰がまっすぐのびて、寝たきりどころかモデルとしてメディアに登場するほど。ほかにも血液検査の数値が改善した、見た目が若返った、体の変化が脳にも影響を与えて認知症テストのスコアがよくなったなどの報告もあります。ひざ裏のばしは筋力、バランス力、気力、知力が高まる超簡単なメソッドです。

1日1回でOK。
毎日続けよう
ひざ裏のばしの前に、自分のひざ裏をチェックしましょう。床の上に両足をまっすぐのばして座り、つま先を上に向けます。背スジをのばし、上半身と下半身が直角になる姿勢を保ち、ひざ裏と床にできる隙間を調べます。

隙間が2㎝未満、手のひらがギリギリ入る程度なら、あなたのひざ裏は「やわらかい」のでご安心ください。2〜5㎝なら「ややかたい」状態です。もし、5㎝以上隙間があるなら「かたすぎ注意!」です。ひざ裏がかたまっているので、すぐにでもひざ裏伸ばしを始めましょう。「やわらかい」「ややかたい」の人も安心せず、予防のために始めることをおすすめします。

ひざ裏のばしには3つの動作がありますが、基本となるのはひざ裏をのばしながら、体幹も鍛えることができる「壁ドン!ストレッチ」です。具体的なやり方をご紹介します。

壁ドン!ストレッチのやり方

  1. 壁の前に立つ
    両足をそろえて壁に向かって立ち、背スジをまっすぐのばす。
  2. 両手を壁につけ、脚を前後に開く
    片方の脚を後ろにずらして大きく開き、両手は肩の高さで壁につけ、前側の脚のひざを曲げて、後ろ脚のひざ裏をのばしながら息を吸う。イタ気持ちいいと感じる程度で。無理してのばしすぎない。
  3. 息を吐きながら壁を5回押す
    おなかとお尻に力を入れ、息を少しずつ吐きながら「1、2、3、4、5」と数えながら腕を曲げて壁を押す。
  4. ぐーっと5秒間キープする
    最後に両手をのばして壁を押し、かかとで床を踏みしめてひざ裏を大きくのばす。息を吐きながら5秒間キープする。
    ※反対側の脚も同様に行う。

所要時間は1分あれば十分です。いつ行ってもよいのですが、ベストなタイミングは筋肉が伸びやすい風呂上がり。1日1回、1日でも多く続けることで、少しずつ改善します。

かわむら あきら●かわむらクリニック院長。
徳島大学医学部卒業後、西洋医学と東洋医学を取り入れた医療を志してクリニックを開業。
著書『5秒ひざ裏のばしですべて解決』など。
www.kawamuraclinic.net

(ノジュール2018年12月号からの抜粋です。購入希望の方はこちらをご覧ください。)
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